真空とは
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皆さんは真空という言葉を聞き、何を思い浮かべますか?
空気が全くない状態? そもそも真空って何? 私達の生活にどんな関わりがあるの?
あまりなじみがないように感じるかもしれませんが、実は日常の色々な場面で真空が使われているのです。
真空の定義
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JIS(日本工業規格)では「真空とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態」と定義されています。言い換えれば、空気が無い状態ではなく、減圧された状態ということです。私達が真空だと思っている宇宙にもわずかな分子が漂っているので完全な真空とは言えません。真空の程度は気体の圧力の単位であるパスカル(Pa)で表し、便宜上4つの圧力領域に分けられます。地上から離れるほど圧力(気圧)は低くなりますが、真空度は逆に高くなります。
真空の歴史
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真空については古代ギリシア時代から議論が繰り広げられ、その存在が証明されたのは17世紀に入ってからです。1643年にイタリアの数学者エヴァンジェリスタ・トリチェリが、水銀を満たしたガラス管を用いた実験で真空の存在と真空度の測定を行いました。1657年にはドイツの物理学者オットー・フォン・ゲーリケがブロンズ製の半球を2つ合わせた内部の空気を抜いて真空にする実験を行いました。彼はその後、世界初の真空ポンプを発明しました。
18世紀には蒸気機関や排水ポンプなど様々な真空ポンプが開発され、19世紀に入ると白熱電球や真空管などが開発されることで「真空」という名称が広がっていくことになります。またそれらの開発、製造のため、より高性能な真空ポンプの開発が進みました。
20世紀に入って食品や鉄鋼などの産業に真空が利用されるようになり、真空ポンプや真空計、真空部品などが産業化され発展し、日常生活では空気を完全に抜いた真空パックや真空による氷の昇華を利用したフリーズドライという手法が広く実用化されました。また1953年にB-Aゲージが開発されたことで超高真空が測定可能となり、超高真空に対応した真空ポンプや真空部品が発展していくことになります。
現代における真空関連産業は急速に発展し、今では半導体分野をはじめとした多くの産業を支える基盤産業として貢献しています。「真空」と定義される状態が、非常に身近なものであることが分かっていただけたかと思います。
身の回りの真空技術
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私達の身の回りに溢れている真空技術を利用して作られた製品を見てみましょう。
毎日手軽に飲むことができるインスタントコーヒーは、濃縮したコーヒー液を零下40度前後の低温で凍結させたまま、真空中で乾燥させています。この真空凍結乾燥技術はフリーズドライ食品のほか、抗生物質、ビタミン、ワクチンなどの医薬品製造にも利用されています。
現在パンデミックとなっている新型コロナウイルスのワクチンは、製造拠点から世界各地に輸送しています。その輸送に欠かせない冷凍設備にも真空技術が利用されています。
また、私達の生活の一部になっているスマートフォンやテレビ、タッチパネルなどの液晶画面は真空薄膜技術で作られています。厚さ数μm程の非常に薄い膜で、光の反射を防いだり、スムーズなタッチパネル操作を可能にしています。
ほかにも食品の酸化を防ぐため使われる真空パック、真空断熱技術で作られた魔法瓶、電気ポット、布団や衣料の圧縮、歯の治療中に使われている唾液の吸引機器などにも真空技術が利用されています。さらには自動車や新幹線・飛行機などに欠かせない半導体素子も真空技術で作られるなど現代の産業で幅広く利用されており、私達の生活に切っても切れない存在となっています。
RDグループと真空技術
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私達アールデックは、得意とする超高真空技術を核とした理化学機器専門商社です。グループ会社であるエイブイシー、イーエルシーとの連携により、超高真空技術分野で世界に提供できる自社製オリジナル真空製品の開発・設計・製造から販売・メンテナンス・アフターサービスまで提供しています。最近では株式会社フジキン、グループ会社エイブイシーと協働しJAXA「はやぶさ2」の国家プロジェクトである小惑星リュウグウから持ち帰った微量なガス分子を分析するガス採取装置を開発し、多大な評価を頂きました。
また国内の真空関連機器の取扱メーカー100社以上の製品を販売しているほか、海外メーカーの代理店として海外真空製品の輸入、販売なども行っています。1988年に官公庁大学の研究機関が集結しているつくばで創業して以来34年に渡り、真空技術に関する経験値を積んできました。これからも研究者、技術者、半導体産業界の方々に信頼していただけるよう、初心忘れるべからずの精神で取り組んでまいります。